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2.衛星業界の動向
日本無線株式会社

日本無線(JRC)の衛星関連装置としては、国内衛星ネットワーク対応の地球局機器群およびインマルサット船舶地球局シリーズがあります。また、子会社の新日本無線ではVSAT用のRFコンポーネント等を製造し、海外のVSATシステム・メーカーに供給しています。ここでは、それぞれの最新製品を中心に紹介します。

1. 国内衛星用地球局システム
国内の民間衛星利用による通信サービスは、1989年に相次いで打ち上げられた衛星によりサービスが開始され、今日までに高度化の一歩を辿っています。JRCにおいては、これら民間衛星を利用したサービスに対応する地球局システムの提供を行っています。現在機器を提供している主なネットワークは次の通りです。


(1) 自治体衛星通信ネットワーク
1990年に設立された(財)自治体衛星通信機構が管理・運営するLASCOMネットワークは我が国最大の衛星ネットワークであり、約4,700の地球局を保有しています。平成15年度からは第二世代システムが運用開始され、高速データ通信や多チャンネル映像伝送が可能なネットワークとなりました。JRCは、本ネットワークに対応した県庁局、車載局、市町村等VSAT局、可搬局 等の各種型式の地球局設備の供給を行っています。最近、可搬局として、平面アンテナ(外形寸法80×46 cm)を使用した機動性・操作性・可搬性に富んだIP伝送が可能な小型の地球局も開発し提供しています。

小型可搬局の外観


(2) 国土交通省高度情報通信ネットワーク
1994年より運用開始されたシステムであり、本省局,地方整備局本局、車載局等から構成されています。災害等発生時に、機動力に富んだ衛星通信車が災害現場へ急行し、本省局、地方整備局本局等への映像伝送や現場との間での電話回線も設けられています。JRCでは、本ネットワークに対応した固定局・車載局の設備を提供しています。


(3) ガス会社等 衛星テレメータ
ガスパイプライン等の点在した地点の状態監視・制御については、衛星利用でのトータルランニングコストの優位性から導入するユーザーが多く、JRCでは、規模に応じた最適なシステム設計を行い、親局・子局から構成するシステムを提供しています。

2. インマルサット船舶地球局装置
インマルサットが2002年12月から開始した新サービス「FLEETシリーズ」に対応する船舶地球局装置およびインマルサット-Cの新システムであるMINI-Cの製品を紹介します。


(1) FLEET F77
インマルサットFLEETシリーズは近年のデータ通信の要求に対応し、従来の回線交換のサービスである音声、FAX、HSD(High Speed Data)に加え、新しく高速データ通信で従量課金に対応出来るパケット通信(MPDS: Mobile Packet Data Service)機能を追加したインマルサットの新しい船舶用衛星通信システムです。このインマルサットFLEETシリーズには、F77、F55及びF33の3種類があり、それぞれ機能、通信エリアが異なっています。
F77はインマルサット−Aおよび−Bの後継システムとして提案され、商船及び大型漁船市場をターゲットし、音声(グローバルビームエリア)、FAX(グローバルエリア)、64 kbpsデータ通信(グローバルエリア)、パケット通信(グローバルエリア)を提供し、アンテナ径がおおよそ77cmφ程度で実現できるため、F77と名づけられました。また、シリーズ中唯一遭難警報送信機能が付加されています。JRCのF77装置の外観を示します。

(2) FLEET F33
FLEET F33は小型漁船やプレジャーボート市場をターゲットに、音声(グローバルビームエリア)、FAX、9.6 kbpsデータ、パケット通信(スポットビームエリア)を提供し、アンテナ径がおおよそ33cmφ程度で実現できるため、F33と名づけられました。JRCのF33装置の外観を示します。

(3) MINI-C
MINI-Cは、従来のGMDSS機器として広く使用されているインマルサット-C衛星移動地球局の送信パワーを5dB低減したものです。これにより船舶地球局装置コストを下げることができ、従来のGMDSS機器としてのみならず、新たなアプリケーションであるSSAS*にも利用されることが期待されています。
*注: SSAS(Ship Security Alert System) とは、 2002年12月国際海事機関(IMO)の海上人命安全条約(SOLAS条約)締約国政府会議で、一定の船舶に対して搭載が義務付けられたシステムです。

3. VSAT用RFコンポーネント製品
新日本無線は、15年以上に渡り、VSATビジネスにおけるC-band からKa-band の周波数帯を全てカバーする LNB (Low Noise Block Down Cconverter) とBUC (Block Down Converter) を中心としたコンポーネント製品を衛星通信VSAT市場へ供給しています。


< C-Band 10W BUC and Ku-Band 8W BUC >
高信頼性、高出力の新製品です。これらの最大の特長は、従来このクラスのBUCに不可欠であったCooling Fanを使用せずにHousingのfin構造を工夫して本体の空冷をおこない、高いMTBFを得られたことです。これにより、Maintenance Freeを望むユーザーにとっては高いコスト効果を生むこととなります。 さらにこのC-Band 10W / Ku-Band 8W BUCはDC Power Supply (DC +48V) の他にAC Power Supply (110/220V) にもoption対応しています。
またM&C機能を搭載できる拡張性の高い製品に仕上がっています。


今後はさらにHigh Powerである C-Band 20W や Ku-Band 16WクラスのBUCにおいても、同様のConceptを展開し(「VSATロードマップ」に示します)、Originalityを持って、この市場でのシェアを拡げていく計画です。

参考:
日本無線のホームページ:http://www.jrc.co.jp/
新日本無線のホームページ:http://www.njr.co.jp/

以 上

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